来季こそ、この僅差を覆し昇格するために。明確になった“足りないもの”
試合は、前半風上に立ちリードを奪った江東BSが、後半怒涛の追い上げを見せた狭山RGを振り切り、ディビジョン2残留を決めた。過去に入替戦で敗れ、D3降格を経験した江東BSの底力が最後に上回った形だが、リーグワン参入1年目にD3で2位となり、入替戦進出を果たした狭山RGもD2で戦っていける実力があることを証明した戦いでもあった。
手ごたえと悔しさが残るシーズン、チームでの100キャップを達成し、スクラムハーフとしてチームを支えた髙島理久也は「選手一人ひとりの練習に臨む気持ち、質の部分が大きく違っていた。選手全員、試合に出たいという気持ちを強くもって切磋琢磨してきたところが一番の成長だと思います」とチームの成長を語る。
そんな髙島は入替戦の2試合を「チームとして自信が付いた試合でしたが、実力差も出たと思う」と振り返った。髙島が感じた実力差はゲームコントロールの部分。「ずっと自陣に入られて敵陣でなかなかエリアを取ることができなかった。そこに関しては僕の責任かなと思います」と悔しさをにじませたが、「今季で自信は付いたと思う。来季は練習でミスに対してより厳しさをもち、外国籍選手頼りになるのではなく、日本人選手がもっと質の高い練習にベクトルを向けていければと思います」と前を向いた。
D2へ昇格するためには何が必要なのか。それはメンバー入りした選手はもちろん、スタンドで大声援を送ったドミネーター(ノンメンバーの愛称)も含めて、明確になったものは多いはずだ。この経験をバネに個々がレベルアップ、チーム力アップを果たし、来季こそ今季果たせなかったD3優勝、そしてD2昇格をつかみ取りたい。
(松野友克)
狭山セコムラガッツ(D3)
狭山セコムラガッツ スコット・ピアス ヘッドコーチ
──今季をとおして、一番成長を感じられた部分はどこになりますか。
「コンタクトレベルのところです。相手のレベルにも違いがある中で、高いレベルでやれたところかなと思います。去年の3月からスタートして1年ちょっと。長い戦いになったので体も精神的な部分もリフレッシュしないといけない。8月からまたみんなで集まって、もう1回チャレンジが始まりますが、精度は落とせない。毎試合のパフォーマンス評価が高くないなら、ダメだと思う。フィジカルだけでなくてメンタルの規律が一番重要となってくるので、そこを上げていければと思います」
──今日の試合、グラウンドコンディションが悪く、前半に風下になる中で、どういう入りをしようという考えだったのでしょうか。
「敵陣でボールをキープしなければいけなかったけど、真ん中でのプレーをし過ぎた。そうなると相手は援護があるから、もう少しタッチのほうでプレーしてもよかった。そういうことが、まだできていない。ゲーム前も話し合っていたけど、もう少しそういうコミュニケーションがあっても良かったと思う。ハーフタイムでも話はしたんですけど。そして、(2枚のイエローカードによって)20分間は14人のプレーになってしまった。上のレベルにいきたいなら、あれはしてはいけない。いつも話していますけど規律の問題。規律の部分は今後もすごく影響してくると思います」
狭山セコムラガッツ 飯田光紀キャプテン
──今季をとおして、一番成長を感じられた部分はどこになりますか。
「選手層の厚さですかね。リーグワンで戦っていく中でけが人も多くいたんですけど、それを埋める選手がすごくいいパフォーマンスをしてくれて、しっかりとつないでくれたので、そこが一番成長した部分だと思います」
──今日の試合、グラウンドコンディションが悪く、前半は風下になる中で、どういう入りをしようという考えだったのでしょうか。
「風下で雨だったこともあり、自陣ではあまりプレーをしたくないというところもあって、キックでエリアをとって敵陣でプレーするというプランでした。それができていた部分もありますけど、敵陣に入って、(スコアを)取り切れない。チャンスの部分でのミスなど、すごくもったいないところがあった。そこがいまのチームの弱み、精度の部分かなと思います」
──D2の相手と戦って得た手ごたえ、またD3のチームとの違いを教えてください。
「手ごたえとしてはディフェンスの部分。しっかりとコネクションをとってディフェンスをすれば防げるんだなと。コンタクトの部分は相手が上手でしたけど、ディフェンスの部分はしっかり通用したのかなと思います。違いのところは、ブレイクダウンのときの激しさ。ブレイクダウンに掛ける人数の違い、入る人の激しさの部分は、相手のほうがすごくアグレッシブだった。そういう点もあって自分たちのブレイクダウンのスピードが出なかったり、自分たちのアタックが出なかったりというのがあったのでそこの部分かなと思います」
清水建設江東ブルーシャークス(D2)
清水建設江東ブルーシャークス 仁木啓裕監督兼チームディレクター
──雨が降り、グラウンドコンディションも悪い中での試合となりましたが、立ち上がりはどういうことをやっていこうと選手に話しましたか。
「見てのとおりの天候と、見てのとおりのグラウンドの状況でした。風上を取ってくれたので、エリアを取って、強みであるフォワードを前面に出してスコアを重ねていこうという話をしました。後半に関しても厳しい展開になるだろうなと前半の試合を見ながら思っていましたが、最後ああいう展開になると、走り続けるとか、気持ちの部分とか、ディフェンスで2歩、3歩前に出て、しっかり相手を止めるというところにフォーカスする以外ないと思っていますので、その辺をしっかり最後まで遂行してくれた結果かなというふうに思っています」
──実際に狭山RGと戦ってみて感じた相手の強さがあったら教えてください。
「試合内容に関しては正直なところ、どっちに転ぶか分からないものでした。最後は2試合とも点数が少し上回ったのかなというふうに思っています。ただ、レギュラーシーズンの狭山RGさんと、入替戦の狭山RGさんは違うと私自身には見えていました。この入替戦に懸ける思いだったり、気持ちだったりというのが、決して気負わず、自然体の中で、闘志を前面に出してきているように感じました。なので、後半40分まで、最後の最後まで気持ちは切れませんでした。前半も後半もそれぞれ最初にトライを取ったときに(狭山RGの気持ちが)折れるかなとか、この試合はいけるかなとかいう思いがあったのも事実ですけど、やっぱりそこからでも追い掛けてきて、こういう展開になりましたので、本当に勝って良かったなという気持ちがありますし、勉強をさせていただいたと思っています。われわれ自身、D2に行って、D3にいたときの気持ちを忘れてはいないつもりでしたけども、その気持ちを思い起こさせてくれるようなチームだったと思います」
清水建設江東ブルーシャークス シアレ・ピウタウ ゲームキャプテン
──雨が降り、グラウンドコンディションも悪い中での試合となりましたが、立ち上がりはどういうことをやっていこうという話がありましたか。
「特にゲームプランは変えたわけではなくて、『試合をとおしてしっかり自分たちでコントロールしていこう』というところにフォーカスしてきました。コーチ陣が用意してくれたプランは天候にかかわらず合うものだったので、そのまま遂行しようと。個人の役割をしっかりもってプレーしようと話しました。それからモールで攻めようとも話しました」
──実際に狭山RGと戦ってみて感じた相手の強さがあったら教えてください。
「(狭山RGは)D2でプレーするに値するチームだと思います。だからこそ自分たちは個人個人の役割を、前回の反省を踏まえて、どれだけ成功していけるか、ゲームプランをしっかりとやり切るかにフォーカスしたことが今日の結果につながったのかなと思います。ただ、今季をとおしてやってみて、序盤にいたメンバーがけがで離脱したこともあったので、やっぱり総力戦になりましたし、全員の力がD2で戦うには必要なんだなということが分かったので、来季からは誰かに頼るのではなくて、個々の能力の底上げを意識してやっていきたいと思います」
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