週刊MLBレポート2025(毎週木曜日更新)

「らしくない」打席が続く6月の大谷翔平 復調のカギは左投手外角低めのスライダーの対応か

丹羽政善

22日(※日時はすべて現地時間)のナショナルズ戦で本塁打を放つも、大谷翔平の打撃の調子は上がってこない 【Photo by Jayne Kamin-Oncea/Getty Images】

なかなか状態が上がらない6月の大谷

 今週のテーマは打撃。6月、いつもの大谷翔平(ドジャース)らしくない打席が続いているが、どうしたのか? ただ、そこを掘り下げる前に前回登板について。

 最後、ネート・ローから空振り三振を奪ったが、メジャーリーグの公式サイトでは、その最後の球が、“カットボール”と表示されていた。しかし試合後、マスクを被ったダルトン・ラッシングに確認すると、「あれはスライダー」と明かした。

 そのことを公式サイトでSTATCAST(ホークアイを用いたメジャーリーグ独自のデータ解析ツール)のデータを分析しているデビッド・アドラー氏に伝えると、「確かに、カットにしては、その前の2球とあまりにも軌道が異なる。捕手が言っているなら間違いないだろう。変更するように伝えておく」との返信があった。

 果たして24日、あの球はスライダーに変更されていた。Baseball Savantのデータは、選手の自己申告でも修正されるが、データを管理するメンバーは、かなり柔軟に対応してくれる。

 話を本題に戻すと――。

 22日の第5打席、外角いっぱいの真っ直ぐを捉えた打球は、きれいな弧を描いて、左中間へ。久々に見た大谷らしい打球だったが、意外にも飛距離はギリギリ。フェンス上部に当たって跳ね返ったと判断され、最初は二塁打に。リプレイ判定の結果、最前列にいたファンのグラブに当たって打球がフィールドに戻った――つまり、フェンスを超えていたと判定され本塁打となったが、ドジャー・スタジアムだからこそ、ホームランとなったようなもの。実際、飛距離的には、30球場のうち柵を超えたのは3球場でしかなかった。

 ただ、今年の飛ばないボールを考えれば、大谷だからこそ、本塁打になったともいえる。打球初速は101.3マイル。角度は37度。飛距離383フィート。同じ条件で検索すると、今季のリーグ平均飛距離は361フィート。2022年も飛ばないボールが使われていたので、2021、23、24年の3シーズンで調べると367フィート。デーゲームで乾燥していたことも影響したが、こんなところにも大谷の規格外のパワーが伺える。

 とはいえ、今季の6月は大谷らしくない打席が続く。知られるように大谷は、6月入ってから例年、状態を上げる。まず、過去2年のxBA(予測打率。打球初速、角度を加味。守備力や運の要素を排除)を見ると、ともに250打席前後で一度落ちてから、300〜350打席で再浮上するのがパターンだった。

2023年xBA 【参照:Baseball Savant】

2024年xBA 【参照:Baseball Savant】

 大谷は6月に状態が上向くことに関して、「ある程度打席を重ねて、目が慣れてくる」と話したことがあり、本人の認識でもそれは必然――という捉え方だった。ところが今年は、200打席前後でピークが来て、その後、メジャーリーグ平均さえ下回る状況が続く。

2025年xBA(赤いラインがMLB平均) 【参照:Baseball Savant】

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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