99%の精度を誇るMLBの球種判別システムが混乱? 復活した大谷翔平の球種に起きている進化
理想に近づいている4シームの回転効率
以下、あの球の軌道データを今季投げたスプリットとシンカーのデータを比較してみる。
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本人に確認するのがベストだが、登板当日は、4シームの軌道の方が気になった。カグリオンに対して投げた初球など、吹き上がるようにして外角高めへ。空振りを奪った縦の変化量は18.12インチで、過去の平均は14.88インチなので、相手には浮き上がって見えたのではないか。
ということは、ついに、大谷の4シームの回転効率(※)が85%を超えたのか? もしそうであるなら、その数値の改善を目指してきた大谷の進化を見極める上では、確認の優先順位が高い。
※球の軌道を決める一要素。いかに回転がそのボールに伝わっているかを表し、回転効率が100%(きれいなバックスピンがかかっている)なら、すべての回転がボールの変化量に寄与し、相手は浮き上がっていると錯覚する。50%なら、回転の持つ力が半分しか球の変化に寄与していない、ということになる。必然、縦の変化量も小さくなる。
ということで、話題をシフトチェンジ。回転効率は翌日にならないと分からないので、縦の平均変化量を確認すると16.44インチと、過去と比べても高い。しかも、あの日のアームアングルは34度だったので、復帰後では一番高いとはいえ、まだ彼の平均よりは低い。
その2つの数値から、回転効率が85%を超えているのでは?と仮説を立て、本人に答え合わせを求めると、「回転効率も、球速帯との比較が一番大事だと思う」と口にしてから、大谷は続けた。
「今日みたいに100マイル近く出ている中でも、浮力も悪くなかったですし、それなりのスピン効率だったと思うので、まだ、全部はチェックしてないですけど、まあ、進歩はしてるのかな」
“浮力”というインパクトのある言葉を使ったが、大谷の場合、力が入ると、球速は出ても回転効率が落ちる傾向がある。しかし、先ほど触れたカグリオンへの初球は99.9マイルだった。それでいて、“浮力”を感じられたことが、手応えにつながったか。
この日の4シームの平均回転数は2487回転(分)。これは、シーズンごとの平均と比較してもはるかに高い。今季の4シームの平均回転数も2391回転となった。
比率から、3試合目だけの回転効率を求めると88.5%だった。おそらく本人は90%を超えるような回転効率を目指しているので、かなり理想に近づいているのではないか。
本人が「進歩はしてるのかな」と話したこともうなずける。